『プログラマが知るべき97のこと』とイベント登壇記録を中心に2010年をふりかえる

2010 年の最後に、私が監修した本『プログラマが知るべき97のこと』が発売されました。おかげさまで好調に売れているようで、本当に嬉しいです。

プログラマが知るべき97のこと

プログラマが知るべき97のこと

2011 年を迎えて一週間経ってしまいましたが、このエントリでは講演等の登壇記録や『プログラマが知るべき97のこと』のコミットログ、 Twitter のログから 2010 年にやったことを振り返りたいと思います。


1月

1月はまず Jim Coplien の芸風やハートが印象に残った一月でした。質問のメールに対して長文の返答をくれる熱い人で、懇親会で短時間でしたがペアプロできたのが記憶に残っています。また、一月はデブサミの打ち合わせがよく予定に入っていました。中埜先生のお宅にお伺いしたのが印象に残っています。

1月は JOJO の月でもありました。まず 1/22 に「第一回 チキチキ エンジニアの為の JOJO 勉強会」に登壇し、酔ったまま SBR について話すというこれはひどい感じの発表を行いました。その一週間後には BPStudy#29 に登壇して TDD の講演とハンズオンをしたのですが、 JOJO 勉強会の影響か JOJO 度がかなり高くなってしまったようです。ハンズオンとコードレビューの時間では、 kazuho さんが C のテスティングフレームワークから作り始め、かつ時間内で終わらせていたことと、 tokuhirom さんの書いたコード(Moose を使っていました)が非常に綺麗だったことが印象に残っています。


2月

ここ数年、二月はデブサミで忙しくなる年です。今年はトラックを二つ受け持ったため大変でしたが、なんとか乗りきりました。謎の体調不良で眠れずつらかったので、近くのホテルを手配してくれた岩切さんの優しさが胸にしみました。最後のセッション、中埜先生のセッションはインパクトの強い空間、時間を作れたのではないかなと手応えを感じました(私がやったのは打ち合わせと前座だけで、あとは中埜先生が話し始めれば、こうなることはわかっていたのでした)。中埜先生セッションの Togetter が残っています(Developers summit 2010 [19-E-7]建築から開発プロセスを学ぶ~パタンランゲージ Tweetまとめ - Togetter)

デブサミの後に、 TDD についての議論が Twitter 上で数日間展開されたのも印象的でした。

また、 東京 Ruby 会議 03 では RSpec の入門ハンズオンを行いました。この日記にあらかじめハンズオン資料を書いてそれを写経してもらうスタイルのワークショップを行いましたが (RSpec の入門とその一歩先へ)、資料はその後も多く読まれ、結果的に私の日記で最も多くブクマをしていただいた記事になりました。


3月

三月はイベント続きで面白い月でした。まずは 3/6 の coffee.rb で、前月の東京 Ruby 会議 03 のハンズオンの続きを行いました(RSpec の入門とその一歩先へ、第2イテレーション)。次に登壇したのは 3/13,14 の TDDBC 北陸です。幹事の id:katzchang さんの熱い思いが原動力となり、金沢の白山里で泊まり込みのイベントを行いました。 TDDBC 初の合宿形式でしたが、とても実りのあるイベントになりました(TDD Boot Camp 北陸に登壇させていただきました)。また北陸に行きたいです。また、そのイベントのときに食べた「ビーバー」という米菓に惚れ込んでしまいました(東京で買えないものかといつも思っています)。

Asian PLoP と次の日の Joshua Kerievsky 氏講演ではパターンへの理解、自分にも流れる OOPSLA School の潮流を再認識しました。Asian PLoP の二日目、 Joshua Kerievsky 氏のアレグザンダーについての講演は今年聴いた中でベストかもしれません。Joshua Kerievsky の次の日の講演(Asian PLoP とは別)に関しては、 id:shiumachi さんのまとめが詳しいです(Joshua Kerievsky 氏講演会「リファクタリングの戦略と戦術」)

仙台 Ruby 会議 02 では、会社を経営している Ruby "親方" が語るというコンセプトのパネルに参加させていただき、いろいろと話しました。牛タンを食べ、その後 JOJO ツアー(JOJO 第4部に関する地名めぐり)を行ったのも懐しく思い出されます。(杜王グランドホテル, http://twitpic.com/19xe5e:title=広瀬通], むかでや)

3/24 に『プログラマが知るべき97のこと』編集者の高さんと打ち合わせを行いました。『プログラマが知るべき97のこと』プロジェクトは、この日にスタートしました。


4月

4月はまず有志の emacs の勉強会に参加し、得るものが色々ありました。同時期にるびきちさんの emacs 本『Emacsテクニックバイブル(ASIN:4774143278)』や WEB+DB PRESS にも emacs 特集が掲載され、正に emacs 充な四月でした。

4/8 にはジュンク堂池袋店で『Webを支える技術 ── HTTP、URI、HTML、そしてREST』トークセッションを著者の yohei さんと行い、仕込みで同書を読み返したのが自分の知識の再整理になりました。もちろん著書にサインを貰いました :-)

Webを支える技術 -HTTP、URI、HTML、そしてREST (WEB+DB PRESS plus)

Webを支える技術 -HTTP、URI、HTML、そしてREST (WEB+DB PRESS plus)

4/21 には、『プログラマが知るべき97のこと』の翻訳者夏目大さん、編集者の高さんとキックオフを行います。これからずっと二人三脚で仕事をするので、夏目さんとぜひ直接お会いしたいと考えていました。夏目さんはとても気さくでキュートな方で、お会いしてすぐ人柄に魅了されました。

4/22 にはデブサミ授賞式があり、中埜先生のお宅(秘密基地)で(ベストバリュー賞)を受賞しました。デブサミでの中埜先生のセッションは歴代二位の満足度だったそうで、企画者冥利に尽きる瞬間でした。


5月

@nagise さんの結婚パーティに出席するために、富山に旅行しました。 TDDBC 北陸に続いて二度目の北陸行、ノドグロの寿司が最高でした。もちろん @nagise さんの結婚パーティも素晴らしいものでした。末永くお幸せに。

5/18 には日本テクノセンター様で一日コースの TDD セミナーを行いました。セミナーの帰りに寄った書店で、私が言及した本をセミナー受講者の方が購入するところを目撃し、幸せな気分になったことを覚えています、

5/22 は UEFA Champions League の決勝(インテル vs. バイエルン)を @ysakaki と footnik 大崎店で生観戦しました。モウリーニョ時代のインテルのリアリズムを再認識した一戦でした。

5/31 はサロネンがフィルハーモニアを連れてきて幻想交響曲を演るというので、サントリーホールまで行って聴いてきました。禿山の一夜(ムソルグスキー)、中国の不思議な役人(バルトーク)、幻想交響曲(ベルリオーズ)とグロ系が並ぶ厨二大喜びの演目で、大満足でした。

プログラマが知るべき97のこと』の監修作業を実質的に開始したのがこの月でした。git を使った原稿バージョン管理のための基盤をつくり、監修作業を行うための環境面の整備と最初のエッセイ数本の監修を行いました。git log を調べると、 5月は 23 回コミットしているようです。


6月

6月は監修原稿とワールドカップ観戦に明け暮れた月で、講演は 6/29 にヌーラボ様でテストの話をしただけのようです。ちょくちょく大崎の footnik (お気に入りのフットボールパブ)や神田のサッカーが観れるバーに行ってはワールドカップの試合を観ていました。ビエルサ監督の超攻撃型サッカーが以前から好みだったのですが、本番でもビエルサ監督の率いるチリのサッカーは眼福ものでした。

ワールドカップ観戦にかまけて原稿をサボっていたイメージがありましたが、記録を見るとコツコツと作業を行っていたようで、 6月は 124 回コミットしています。

また 6/4 には、これまで手元で使っていたライブラリ QUnit-TAP を github で公開しました。


7月

7月はイベントの月でした。まずは TDDBC 名古屋です(TDD Boot Camp 名古屋に登壇させていただきました)。TDDBC 北陸に参加した id:bleis-tift さんが、「自分のところでもやりたい」と手を挙げてくださり、名古屋の金山でまた泊まり込みのイベントを行いました。名古屋の強力なコミュニティ基盤に豊橋からたくさん来た学生さんの勢いも加わり、盛り上がった楽しいイベントになりました。 ScalaOcaml を使う人がおおく、名古屋は関数型の国だと感じました。また名古屋から帰って数時間でワールドカップ決勝でした。
オブラブ夏イベントで咳さんの話や若人セッションを楽しんだ次の日は id:yoshiori の車に乗せてもらい「とちぎテストの会議」に参加しました。後にわかるのですが、このときテスト界の著名な方々の前で TDD の実演を行ったのは意義のあることでした。とちぎではテスト、 TDD に関する突っ込んだ議論を行うことが出来ました。7/28 にはアッズーリ様の社内イベント「渋谷鮫」で同じく TDD の講演、その2日後、久しぶりの Shibuya.js では観客として参加して酒を飲みまくっていたら、かなり酔ったあとで id:secondlife に壇上に呼ばれてテストの話をするという、やや恥ずかしい体験をしました。

プログラマが知るべき97のこと』の進捗は、決勝トーナメントが始まったワールドカップ観戦とイベント連続登壇でコミットが前月よりやや少なくなり、 7 月は 91 回コミットを記録しています。


8月

途中にお盆休みを挟みますが、基本的に8月は引き続き『プログラマが知るべき97のこと』の作業を行っていたと思います。153 回コミットを記録し、監修量としては、この月がトップだったと思います。

8月参加したイベントは coffee.rb と RubyKaigi2010 です。coffee.rb では RSpec ハンズオン企画の続きを行いました(RSpec の入門とその一歩先へ、第3イテレーション)。そして Ruby 会議です。今年は Sarah Mei のお手伝いでペアプログラミング文化交流セッションをやったり、 Ruby 親方会議に登壇するなど、企画部屋に多く絡みました。これも RubyKaigi のひとつの楽しみ方かなと思います。ホスピタリティにあふれた素晴らしいイベントでした。


9月

九月は、XP 祭り、 Ruby World Conference 2010 に参加しました。「サンライズ出雲」に乗って松江に行ったのですが、寝台列車というものはなかなか良いものでした。そして Ruby World Conference 2010 は普段聞けないような内容のセッションもあり、参加して良かったと思えるイベントでした。

9/15 には、『ソフトウェアライセンスの基礎知識』著者の可知豊さんに登壇いただいてライセンスについて勉強する java-ja 第1.9.2回 チキチキ ライセンスって何ですか? という勉強会を企画しました。このイベントは非常に盛り上がり、私自身も学ぶものが多いにありました。

9月は『プログラマが知るべき97のこと』の監訳締切りの月でした。締切り効果で直前の修正も多く、 240 回コミットを記録しています。


10月

10月は、ひたすら査読反映の月でした。査読をお願いした xUTP 読書会のメンバーが査読結果を次々と送ってくださるので、それをひたすら反映したり推敲したりする月でした。また寄稿者紹介の監修と、まえがき執筆もこの月に行いました。先月と同じく締切り効果で直前の修正も多く、 231 回コミットを記録しています。

この月から本業がかなり忙しくなり、楽しみにしていた rubyconf (ニューオーリンズで開催) を泣く泣くキャンセルしたのは、少し悲しい思い出です。

登壇に関しては、10/22 に takesako さんの依頼で私と角谷さんで Cybozu Developers Conference に登壇し、講演とパネルディスカッションを行いました。クックパッドにお伺いし、セコンさんとテストの話をしたのもこの月でした。

また、 facebook が突然盛り上がり始めたのも、この頃だったと記憶しています。初期の mixiTwitter のような空気が楽しいと感じました。


11月

11月には『プログラマが知るべき97のこと』はテキスト原稿から、 PDF での「ゲラ」の段階に入ります。ゲラの段階に入ってからは、 iPad が大活躍しました。iPad 版 GoodReader で注釈を付けながら校正を行ったおかげで最終確認の効率は非常に上がり、本の質に対して良い効果があったのではないかなと思います。

11/18 には Sony Digital Network Applications 様の社内勉強会 Meisters に登壇させていただきました。"TDD on Meisters" と題し、TDD に関する講演とハンズオンをさせていただきました。

11/20 には Firefox Developers ConferenceShibuya.js 枠の LT に参加します。私にとって、 Shibuya.js の一員として講演できたのは誉れでした。講演は JavaScript のテストについての LT で、講演資料はこちらです(10+1 Things you should know about JavaScript testing)


12月

12月、とうとう『プログラマが知るべき97のこと』発売の月です。12/1 にオライリー, 12/3 に Amazon に掲載されるとたくさんの反応があったことを嬉しく覚えています(O'Reilly Japan - プログラマが知るべき97のこと, http://www.amazon.co.jp/dp/4873114799)。

12/4 は札幌 Ruby 会議 03 に参加しました。仕事のスケジュールの関係で行けるかどうかギリギリだったのですが、なんとか出発。札幌 Ruby 会議は毎回参加しています。もちろん次回も行きたいです。発表のなかでは、私はしまださんの発表が印象に残っています。

札幌に行った際に @mayuco さんにお会いしてお願いした結果、 @mayuco さんがきのこロゴを作成してくださいました(http://inside.cocooooooon.com/2010/12/10/index.html)(このロゴは CC-BY-ND 扱いでどなたでもお使い頂けます)

Togetter で「97のこと」プチブームが起こったことも記憶に残っています。

そして 12/18 、『プログラマが知るべき97のこと』がとうとう発売され、店頭に並びました。自分が手がけた本が店頭に並んでいるところを見るのは非常に感慨深いものでした。Amazon のランキングのスクリーンショットを撮ったり、店頭に平積みされているところを記念写真に撮ったりと、初めての本が出た実感を噛み締めました。

プログラマが知るべき97のこと

プログラマが知るべき97のこと


と、ようやく12月まで来ました。 2010 年は TDDBC 北陸,名古屋への登壇等 TDD に関する講演と、『プログラマが知るべき97のこと』の監修を中心に相変わらず忙しく、公私共に忙しくも充実した年となりました。こうして記録から見ると様々な場所に行っていますし、Twitter などを介して開催されるイベントで初めてお会いした人も多く、ネットワークの面白さを知った一年でもありました。 2011 年も多くの人と出会い、多くの人と話したいと思います。